留学生受け入れ、問題多い政府の計画《私の主張》(01.21毎日新聞)

留学生受け入れ、問題多い政府の計画

「アジアとのかけ橋」意識を

《私の主張》NPO法人監事 佐藤一輝

「未来の大使」と呼ばれる来日留学生は約13万人に達し、さらに増えると予測される。背景には、福田政権時に政府が策定した「留学生30万人計画」があり、09年度は518億円が交付されている。だが、この計画には多くの問題点がある。

 

まず、計画には「なぜ30万人なのか」についての説明がない。「グローバル戦略の一環」と銘打つが、少子化に苦しむ日本の大学の救済策という側面が強い。実際、計画の条件に沿い留学生を受け入れる大学には毎年、億単位の助成金が出ている。

助成金を出す条件にも違和感を抱く。英語だけで学位を取得できる受け入れ体制を整備するよう、大学側に求めているためである。一見、もっともらしいが、留学生の約7割は、中国と韓国から来ている。彼らが日本の大学で英語で学位の取得を目指す必要はない。なぜなら、日本語で学位を取得する方が就職の時には有利だからである。

 

計画は宿舎整備や卒業後の就職支援もうたうが、東京近辺の留学生にその恩恵を受けている実感はあるまい。6畳の部屋を3〜4人でシェアし、就労時間数に厳しい制約のあるビザに悩みつつ、アルバイトで生活費を稼がねばならない。また、これほど苦労しても就職できず帰国する学生が増えている。7府省が昨夏出した報告書によると、就職率はわずか30.6%だ。

 

30万人計画の最大の問題は、留学生増に最も効果がある奨学金事業に費用が投じられていないことだ。

今年度予算518億円のうち奨学金は国費留学生と私費留学生合わせて299億円、残る219億円は日本紹介のDVDやピンバッジ製作、日本語教育普及や就職フェアなど迂遠な事業に振り向けられている。実際、奨学金は08年度で国費留学生の大半を占める約1万人には行き渡ったものの、私費留学生は約1割の1万3000人にとどまる。

独立行政法人などのかかわりも問題だ。例えば留学生を受け入れる大学への助成を審査するのは日本学術振興会の専門委員会。副委員長には、計画を推進する母体である日本学生支援機構の理事長が就任している。複数の独立行政法人や公益法人がかかわることで、経費、人件費など費用対効果を低めているのではないか。

 

こうした実態を踏まえ、次のように提案したい。鳩山由紀夫首相が言う「東アジア共同体」構想や「新しい公共」の概念の視点をもち、計画を抜本的に見直すべきである。

具体策としてはまず、私費留学生向けの奨学金制度を大胆に拡充することだ。私大で年間最低80万円以上はかかる学費だけでも、給付すべきではないか。また、高額な生活費を補助する意味でも、アルバイトをめぐる就労時間の制限など厳しい制約がある留学ビザの改善が求められる。

 

大学教育においても、日本で学ぶことが本当に役立つと実感できるようなプログラムが必要だ。

例えば、日本の新たな成長戦略の一環である介護や医療と結びつけて、介護福祉士や看護師を目指すコースを設ける。こうした人向けの特別な奨学金制度を充実させれば、留学生と日本社会にとって費用対効果が高いだろう。さらに「新しい公共」の担い手として経験や蓄積のある市民やNPOを積極活用し、留学生向けの相談事業に本腰を入れるよう、提案したい。

 

日本社会がこうした諸課題に本気で取り組み、その実績が留学生を通じてアジアの人々に知れ渡れば、多くのアジアの若者たちは新たな魅力を日本への留学に見いだす。そうすれば、おのずと人数も増えるはずである。


佐藤 一輝 (さとう かずてる)

「外国人留学生・就学生問題を考える会」代表を経てNPO法人「留学生生活支援相談センター」(RSSSC)監事。しんきゅうマッサージ師。

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